3.歯を抜かない矯正

顎の大きさと歯の大きさ
 まずは抜歯(ばっし)についての説明です。抜歯とは歯を抜く事を言います。歯科治療において抜歯(歯を抜くこと)のときは、病名が付きます。ここでの病名は、歯を抜かないといけなくなった原因です。親知らず(8番目の歯)以外はカリエス(むし歯)か歯周病(歯槽膿漏、歯周疾患)が主な原因です。これは抜歯しないといけない理由が、その歯にあるという意味です。
 それでは矯正治療で抜歯を考えないといけない理由はなんでしょう。これは少し説明がわかりにくいので、例え話として数字を使って説明します。顎の大きさを100%とします。今度は歯の大きさ(通常なら14本の幅の合計)が100%以上なら歯並び(噛み合わせ)が悪くなります。例えば歯の大きさが140%なら、40%分隙間がないので歯並び(噛み合わせ)が悪くなります。そして95‐105%位なら、おそらく歯並び(噛み合わせ)は上手くいきそうですが、位置がずれたり歯がずれたりすると、矯正が必要になります。逆に60&位だと歯と歯の間の隙間が大きくて見た目が気になるかもしれません。こういう歯並びはすきっ歯と呼ばれています。今回の説明では説明は省かせてもらいます。 
 ここで100の顎に140の歯をどう並べるのかが、矯正治療と言う事になります。今度はこの数の違いをどう調整するかで矯正方法は2つに分かれます。
 (1)顎に合わせて歯の幅を減らす。
 (2)歯に合わせて顎の幅を増やす。

(1)顎に合わせて歯の幅を減らす。
 この治療法は、別な言い方をするなら「顎が小さいから抜歯して(歯を抜いて歯の数を減らして)矯正する(歯並びをかえる)」という意味です。そのためには抜歯(歯を抜く)が必要です。この場合抜く歯には、直接的な理由はありません。歯科的な理由はとしては「歯列弓と歯槽基底弓の大きさの不調和(アーチレングスディスクレパンシー)といいます。
 「顎に合わせて歯の幅を減らす=歯を抜く」矯正治療です。通常は小臼歯と呼ばれる歯4本を抜きます。この際実は注意が必要です。歯科治療は保険で治療されることが多いと思いますが、保険での治療の大原則は病名があるからです。この時抜かれる歯には病名がありません。矯正治療のため歯を抜くのは原則できないので、自費診療になります。

(2)歯に合わせて顎の幅を増やす。
 こちらの矯正治療では抜歯をしない(非抜歯)で治療を進めます。成長期のお子さんは適切な方向に力を加えて、本来成長する力を引き出します。これは読んでいてもそんなものかなとご理解いただけると思います。
 ですが、山本歯科医院では成人矯正の方もいます。すでに成長が終わっていても顎の幅は広がるのと疑問を感じると思います。上顎に関しては上顎正中縫合という所があるのですが、そこが鍵になります。
 それと歯軸です。現代人は弥生時代の人間より歯が倒れています。その向きが変わるだけでもかなり歯を並べる幅は広がります。上顎正中縫合と現代人と弥生時代の歯軸に関してはかなり興味深い内容なので、別ページで取り上げますので、現在制作中ですが、いずれそちらも読まれてください。

抜歯それとも非抜歯
 抜歯か非抜歯かは(1)で取り上げたアーチレングスディスクレパンシーが、どれほどあるかであり、それは、個人差があります。それに年齢も考慮すべきでしょう。例えとしてまた数字で表したいと思います。顎の大きさを100%としましょう。そして並ぶべき歯の幅の合計をそれに合わせて変えていきます。当然100%前後なら矯正は不要と思われがちですが、ねじれや位置が違うなら矯正は必要ですし、当然非抜歯矯正です。
 今度は140%ならどうでしょうか、色々考えられます。
1)まず年齢が若ければ顎を成長させて非抜歯で治療します。
2)顎の状態を考えてみる。顎が狭窄している場合。(※解説1)非抜歯を選択
3)顎は十分に成長していて、もうこれ以上成長が期待できないから抜歯を行う。(考えられますが、顎が成長していれば140%にはならない気がします。)
※解説1:顎が狭窄しているのは、上顎の顎の左右幅が狭い状態です。アルファベットの「V」のような顎と思ってください。この顎の状態「V」字型から→「U」字型に矯正するのは十分期待出来ます。(2)で説明した上顎正中縫合と歯軸の向きで対応。
 これでは抜歯は考えられないように思えますね。問題は非抜歯で対応しても歯が並びそうにない場合、そこで初めて抜歯を検討します。そのため山本歯科医院では第一選択しで抜歯は考えていません。実際抜いたことはほとんどないです。最近の10年で(令和4年での話)3本だと思います。そのうち2本は噛み合わせが悪くて大臼歯が割れており、代わりに親知らず(8番目)を移動させました。もう1本は成人矯正で60歳近い方で位置も悪く、カリエスもあり3)のケースに近かったからです。
 3)のケースは珍しいと思いますが、この場合は抜歯を考えます。それと8番目(親知らず)は原則抜くことをお勧めします。8番目(親知らず)を並べることはありますが、その場合は最初から計画します。

舌のためにも非抜歯で!(私的意見)
 歯を抜く場合、矯正期間は非抜歯より短いと思います。顎を広げる、成長させる分長くかかると思います。なら抜歯して早く終わった方がいいと考えるのは間違いとは思いません。そこで舌のことを考えると、舌が収まっている空間は広い方がいいと思います。このHPを見ていただいている方なら嚥下など舌に対しての記載が多いことは分かると思います。舌を狭いところに押し込めると、将来良くないのではないかと考えています。
 反論する先生にご提示できるエビデンスもないのですが、無呼吸症候群の治療は顎を前に出す装置を作ります。(歯科で作っています)考え方を変えると、舌を前に出すから気道が広くなって無呼吸を防ぐといえると思います。なら成長が悪く顎が小さいから歯並び(噛み合わせ)が悪いのに、歯を抜いて小さい顎に合わせて歯並び(噛み合わせ)を作るのは良いとは思えません。