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2023年2月7日 : 上顔面、中顔面、下顔面
? 頭蓋骨の模式図で多少気味悪いかもしれませんが、矯正治療を考えるうえで、骨の成長は重要です。それと上顎骨(上の顎の骨)と下顎骨(下の顎の骨)の位置関係が話の鍵になります。図を見ながらお読みください。
横から見た絵ですが、顔を3つの部位に分けると上顔面・中顔面・下顔面に分けられます。まず上顔面ですが、脳を覆っている骨を頭蓋骨と言いますが、ほぼ頭蓋骨の部分が上顔面です。中顔面は眉間部分から上顎骨までです。そして下顔面は下顎骨になります。
? 矯正治療において上顎は中顔面にあり、下顎は下顔面にあります。そして上顔面・中顔面・下顔面の成長時期が異なります。矯正(歯並び)の治療は歯の大きさと顎の大きさが合わないから生じます。ならば顎の成長が上手くいけば歯並びもきれに並ぶかもしれません。


2023年1月23日 : 顎の成長(まず脳の成長について)
 歯の矯正を顎の成長と合わせて考えていきます。まず脳の成長について説明します。(必ず顎の成長に結び付きますので、お読みください。)
  親として子どもの矯正治療(歯並び)については心配になる事と思います。子どもの矯正治療(歯並び)を顎の成長を交えて触れていきたいと思います。始まりは脳の重さについて説明します。矯正治療(歯並び)の中で反対咬合について説明するには、ここから始めるのが大事です。これは矯正治療で反対咬合をいつ治すかの説明にもつながります。
 生まれたての赤ちゃんは非常に頭でっかちな状態です。体の大きさに対して3頭身ぐらいです。脳の重さは350-400gぐらいです。体重は3000グラムとしたら、脳の比率は11.6-13.3%になります。今度は成人ですが、性別年齢にもよりますが脳の重さはおおよそ1200-1500gです。体重60Kgとしたら、脳の重さの比率は2.0-2.5%になります。いかに赤ちゃんの頭が大きいか分かると思います。
 さらに生まれてから6歳ぐらいまでに、脳の重さはほぼ成人の95%に達します。脳の重さは生まれてから6歳までに急成長することが分かります。そしてその成長は緩やかになりますが、おおむね12歳頃まで続きます。


2021年6月19日 : コロナウイルスワクチン接種に協力しています
コロナウイルスワクチン接種に協力してきました
 全世界を覆うコロナ禍で、日本でもワクチン接種が本格的に開始しました。越谷では越谷歯科医師会は、医師会に協力してワクチン接種の手伝いをしています。私もその一人として協力しています。売名行為になるのか悩みましたが、ブログで書くことにしました。
全国で何人の方がワクチン接種にたずさわっているのか分かりませんが、歯科医師が協力しているのはそれ程多くないのでしょうか。ところが、越谷歯科医師会ではかなりの先生が協力参加しております。まずは越谷歯科医師会会長平井先生の言葉をお借りしますが、「医療従事者として優先的に接種してもらって、これで何もしないわけにはいかないだろう。」人づてに聞いたので若干違うかもしれませんが、心動かされる言葉です。
私個人的にも何かをせねばとは思もっても、おそらく出来たかどうかわかりません。越谷歯科医師会が越谷市医師会に申し出ることで、越谷ではこれだけ多くの歯科医師の先生が協力できたのだと思います。しかも会長個人の意見でなく、理事会での承認もあるはずですから、越谷市歯科医師会の総意と言えます。
 歯科医師によるワクチン接種をテレビでも放送されたことがあると思います。この法的解釈は令和3年4月26日厚生労働省から出ました。意外と最近の話です。(事務連絡令和3年4月26日「新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種のための筋肉内注射の歯科医師による実施について」より)
 「解釈の一部抜粋です。」ワクチン接種のための筋肉内注射は歯科医行為ではなく、医行為である。医師法第17条に違反する。 (略) 感染拡大を防止し、住民の生命や健康を守るために迅速にワクチン接種を進める必要がある。公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、17条との違法性は阻却されえ得るものと考えられる。(阻却される:法律用語で違法性ではないという意味。) (略) 必要な医師や看護師等の確保が出来ないと判断した場合。地域の医師会等の関係者との合意の上で歯科医師会等に協力を要請する必要がある。(越谷市はここがスムーズに行えたのでしょう。)  (略) 特設会場に限り、医師の適切な関与の元で行う必要がある。会場内に歯科医師も筋肉注射をしていることを掲示し、被接種者に知らせておく必要性がある。さらに事前に決められた内容の研修を受ける事。
・ワクチン薬の基礎知識、解剖学的基礎知識(腕周りの筋肉や骨、神経等について)、
・接種時の注意点(実技研修も実施すること)
・アナフィラキシーショックへの対応。

研修時間2時間程度。これに加えて、接種の実際の実技研修。
あまり資料や写真を載せるのはどうかと思いますが、研修会で撮影した写真を1枚載せたいと思います。刺入点を示したガイドです。これと実際注射を打てる腕の模型もあります。腕の模型は針の刺す位置や深さが違うと赤ランプが、正しければグリーンのランプが点灯します。意外とリアルに出来ていました。



研修内容で知られているようで意外と正確に知られていない内容をご紹介します。
それは「ワクチンの有効率」についてです。
薬の効果を確かめるさい。実際の人に打ってワクチンの効果を確かめる事を治験と言います。この時、ワクチンと偽薬(全くワクチンを含まない生理食塩水等の無害な薬)の2種類を使います。協力してくれる人には、2種類のどちらを打たれたかは伝えられません。打ち手もどちらか知らされていません。その後、協力者の経過を追っていきます。
ワクチンを打った人(黒丸が発病者、白丸が感染しなかった人)
12345678910
●○○○○○○○○○
偽薬の人
●●●●●○○○○○
ここでワクチンの有効率ですが、偽薬の人は5名発病しています。しかし、ワクチンを打った人は1人で済みました。もし、偽薬の人がすべてワクチンを打っていたら発病したのは1人で済んでいたわけですから、4名の方が感染しなかったと考えます。5名中4名が感染を抑えられた事になります。これがワクチンの有効率です。計算してみますと、
5人中4名 ?(4÷5)×100=80% ?有効率80%となります。
日本で打たれるワクチンは今の所以下の3つであり、かなり高い有効率ではありますが、100%ではありません。ですから注意すべきは、ワクチンを打った人でもコロナに感染するという事です。(上図のワクチンを打った人に●があるなら100%にはなりません。)
 アメリカのファイザーワクチンの有効率は95%
 アメリカのモデルナワクチンの有効率は94.5%
 イギリスのアストラゼネカの有効率は70.4%
参考にインフルエンザの有効率は60%とあります。(厚生労働省「令和2年度インフルエンザQ&A」より)この資料の元が分からないのですが、令和2年度の所にあるので、それ程古い資料ではないでしょう。どちらにしても、コロナウィルスワクチンの有効率は高い事が分かります。
 ファイザーとモデルナのワクチンはmRNAワクチンで、アストラゼネカはベクターワクチンです。この違いはかなり難しいので触れませんが、どちらも全く新しい技術で作られました。おかげで通常の開発期間に比べ、驚異的と言えるほどの短期間でワクチンを作ることが出来ました。さらに皮肉な話ですが、開発国アメリカ・イギリスで、コロナが恐ろしいまでの猛威を振るったのも背景にあるのでしょう。
 最後に、歯科医師である私も研修を受けてきました。当然実技練習もしてきました。日本歯科医師会もHP内で勉強できるよう準備もしてくれました。その映像学習も見て勉強しました。会場で歯科医師が接種を担当していても、もしこれを読んでくれた方が打たれる側で席についても、決して心配しないでください。1日でも早く全員がワクチンを打ち終える日が来るまで、微力ながら頑張りたいと思います。

2021年5月23日 : スリッパの殺菌消毒はじめました
・・・スリッパの紫外線殺菌はじめました・・・
 山本歯科医院に新しい感染予防対策の機械が来ました。医院内で使ってもらえるスリッパですが、スリッパの消毒がなかなか大変です。どれが使ったものなのか分からないのが悩みの種でした。毎回消毒することも出来ず、たどり着いたのが紫外線照射によるスリッパの殺菌です。
一般的な紫外線照射で殺菌してくれるのは、ロッカーのような形をしており、入れておけば紫外線殺菌してくれます。ですがずっと疑問がありました。5分前に入れた物を次の患者さんがまたすぐ使ってしまうのではないかという疑問です。スリッパが殺菌終了の合図してくれるはずもないので、悩んでいました。
そこで見つけたのが、株式会社IHIアグリテック社製スリッパ殺菌ディスペンサー SSDXです。かなり人気商品だったようで、欲しいと思ってから来るまでに半年ほどかかっています。文字通り忘れたころにやってきました。山本歯科医院玄関入ってすぐに置いてあります。



初めて見る人はスリッパ入れとは分からないかもしれません。使い方もご説明します。
まずはボタンを押します。



すると下からスリッパが出てきます。



戻す時は上に載せるだけ



ここからは効果についての補足です。
まず、紫外線殺菌の殺菌についてですが、消毒、滅菌について触れます。
(滅菌)滅菌は有害だろうが無害だろうが、すべての微生物・ウィルスを死滅させること。
(消毒)病原性微生物を、害の無い程度まで減らすこと。あるいは感染力を失わせたりして、毒性を無力化させること。
それでは殺菌はというと
(殺菌)「菌を殺す」ということです。対象や程度を含まない概念、病原性微生物が100%から1%減って99%残っていても殺菌していると言えます。
少し寄り道ですが、
(抗菌)細菌の増殖を抑制する(阻止すること)であり、菌を殺す効果はありません。
(除菌)菌を取り除いて数を減らす事。量や対象となる菌の概念はありません。

紫外線殺菌に戻りますが、どれくらいの時間でどれくらいの病原性微生物(菌)を減らせるかが大切になります。
まず、コロナウイルスなら10秒間の照射で99.99%減少させることが出来ます。
(藤田医科大学 プレリリース発表 2020.09.11から引用)
コロナウイルスに対しては10秒で効果的のようです。それでは他の菌に対してはどうかと思いましたが、調べるまでもありませんでした。この製品のパンフレットに載っていました。



この表を見て気が付いたのですが、やはりスリッパなら水虫がうつる事は心配ですよね。靴下を履かない方は珍しいと思いますが、紫外線殺菌の機械に30分入っていればその心配もないという事です。山本歯科医院は30分で10人は診ていませんので、安心してお使いいただけることが分かりました

2020年11月29日 : 母子健康手帳の歴史

母子健康手帳の歴史
母親教室に行ってきたことを書きましたが、それに絡めて母子健康手帳について触れたいと思います。この母子健康手帳は調べてみると実はすごく奥が深く、歴史もあり、輝かしい進歩も遂げています。少し長いですが、是非最後までお読みください。
母子健康手帳の始まりは昭和17年7月13日にさかのぼります。実に79年前です。最初は「妊産婦手帳」と言う名前でした。大東亜戦争中(正式名称と思いますが、物議を醸すのでしょうか。)の話です。手帳の内容は出産の状況、妊産婦・出産児の健康状態記載欄等であり、手帳の持参により、米、出産用脱脂綿、腹帯用さらし、砂糖などの配給を受けることができたそうです。
プライベートな内容に国が関与したら、今のご時世だとプライバシー侵害と言われるかもしれません。ですが結果的に見ると、妊娠・出産そして保育を一連の流れとしてとらえる事で、子どもの成長を管理できるシステムを作ることが出来ました。この妊婦手帳の誕生は、実は世界でも初の試みであり、世界的に見ても画期的なシステムなのです。
 その後、昭和23年5月28日から、「母子手帳」と名前を改め内容も変わりました。まず、出産の状況、産後の母の状態、乳児の健康状態は引き継かれています。そこに、小学校就学前までの健康状態、乳幼児の発育平均値のグラフ等 (乳幼児期までの記録も行うようになった。)が加わり内容が充実され期間も小学校入学まで伸びています。
 昭和40年には「母子健康手帳」と名前を改め、健康という言葉が入りました。昭和51年の改正ではお母さんが書き込める欄を大幅に増やし、育児記録としての役目も果たすようになります。お母さんが付ける育児記録で、発育障害などの子供の病気が早期発見出来るようになりました。
そして昭和62年の改正では、歯科保健の記録欄が増えました。出来てから45年目にしてやっと歯科が係わってきました。妊産婦さんのお口の中が赤ちゃんに影響することは色々と分かってきましたが、母子健康手帳に歯科が加わったのがこんな最近の事であることは、歯科医師として今回ブログを書くまで、正直知りませんでした。言い訳としまして、翌年の昭和63年に歯科医師になったので、歯科に携わったときから母子健康手帳に記入する機会はありましたが、歴史までは知りませんでした。妊産婦さんに歯科が大事なことは別の機会で取り上げたいと思います。
さらに進んで、平成3年には国の交付から市町村が交付するようになり、自治体独自の取り組みも加える事が出来るようになりました。平成14年は今までの手帳では子供の成長曲線はただの線で表示していました。それが逆に「うちの子供は成長が遅いのかしら」と不安になるお母さんが増えたようで、成長曲線に幅を持たせるようにしました。幼児虐待や子育て支援の内容、働く女性のための支援、それに父親の育児参加を促進する記載が載りました。父親の育児参加と言えば、イクメンという言葉を浮かぶと思いますが、この「イクメン」の元は、厚生労働省のイクメンプロジェクトが始まりです。時期は平成22年なので母子健康手帳の方が先駆けとなります。平成20年に離乳の時期の概念や言葉の説明などの修正を行い、今に至ります。 
歴史の次は、母子健康手帳はどのような効果をあげたのでしょうか。医学の進歩や栄養状態の改善など理由は多岐にわたりますので、すべてが手帳の効果ではありません。ですが、日本においての乳幼児死亡率は1950年(昭和25年)60.1人(乳幼児死亡率:出生時から満1歳に達する日までに死亡する確率。出生1,000人あたりの死亡数で表す。)が2004年(平成16年)2.8人と激減しました。この数字がすごいのは実感できないと思います。年代が違うので比較としてはおかしいのですが、ユニセフの発表で2016年乳幼児死亡率は世界平均で31です。これで日本の乳幼児死亡率がいかに優れた数字なのか分かると思います。
そして母子健康手帳は、今では世界に広がりつつあります。独立行政法人国際協力機構JICAの活動の一つにとして行っています。それと特定非営利活動法人NGOのHANDS(ハンズ)も活躍しています。(ハンズは母子健康手帳を普及支援する事を中心にしている組織のようです。)
今母子健康手帳はどれくらい世界に広がっていると思いますか、JICAさんのHPには以下のように載っています。
・約50カ国・地域で使用実績(国の一部のみ・一定期間のみも含む)参照下の地図(ハンズHPよりお借りしました)
・世界年間出生数1.4億人(ユニセフ世界こども白書2019より)、そして母子健康手帳は年間約2000万冊(2019JICA推計)が母親の手に届いています。計算上は7人に1人の母親の手に手帳が届いていることになります。日本が行っている事業であり、これだけ世界に広がっているのに、日本人にあまり知られていないのが不思議なくらいです。
 最後に2018年9月13日世界保健機関(WHO)が「母子の健康に関わる家庭用記録に関するガイドライン」を発表しました。この策定には大きくJICAの働きがあったようです。
ガイドラインでは、JICAが20年以上にわたりインドネシアで協力してきた母子手帳の普及と効果の研究結果が、その活用効果を科学的に証明する事例のひとつとして採用されています。今後、このガイドラインによって、母子の健康を改善・維持するために母子手帳が多くの国で導入されることが期待されます。日本で生まれた母子健康手帳が日本人の手で世界中に広がり、世界中のお母さんが言葉こそ違え、手に取って読むのは、もうそう遠くない未来かもしれません。早くその日が来るのを祈るばかりです。